フットボールの真実 大住良之

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help リーダーに追加 RSS 第222回 悪化する日程問題とは何か(上)

<<   作成日時 : 2007/05/28 10:36   >>

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 「過去数年間、僕が休むことなくプレーを続けてきたことは、よくご存じだと思います。その間、僕はサッカー選手に推奨されている必要な期間の休息を取ることができませんでした。それは、クラブでもブラジル代表でも、僕にプロフェッショナルとして求められるハイレベルのパフォーマンスに影響を与えています。僕はこれまで自分が果たしてきたナショナルチームへの貢献の責任感と満足を示してきたと思います。黄色いシャツを着るこことは、僕にとって、祖国への誇りと愛を再認識させるものでした。ブラジル・サッカー協会がこれまで僕に対して払ってくれた敬意と親切を、とてもありがたいことと感じてきました。これまでに築いてきた良好な関係を考慮し、今回の僕の要望を理解していただきたいと思います。次の機会には、これまでと同様、誇りと満足をもってナショナルチームに参加できると思います。そしてこれからも、ブラジル代表ですばらしいときを過ごせると思います」

■ことしは「地域選手権」のシーズン

 冒頭の一文は、ブラジル代表のロナウジーニョ(バルセロナ)が、6月26日に開幕するコパ・アメリカ(南米選手権)への招集を免除してくれるよう、ブラジル・サッカー協会に書いた手紙です。ロナウジーニョと並ぶブラジルの攻撃の中心選手、カカ(ACミラン)も、まったく同様の要請を行っています。

 ワールドカップから1年、ことしは「地域選手権の年」です。6月6日に開幕するCONCACAFゴールドカップ(北中米カリブ海選手権)を皮切りに、6月26日から7月15日まではベネズエラでコパ・アメリカ、そして7月7日から29日まではAFCアジアカップ(アジア選手権)と、地域選手権が相次いで開催されるのです。

■それぞれの地域選手権のカレンダー

 FIFA傘下の6つの地域連盟の選手権は、それぞれの地域の事情に応じて開催されています。

 1991年に第1回大会が開催されたCONCACAFゴールドカップは、96年から2年にいちどの大会となり、2003年から奇数年に開催されています。

 1916年に始まった世界で最も古い地域選手権であるコパ・アメリカは、近年は2年にいちど、奇数年に開催されてきましたが、今回から4年にいちど、ワールドカップの翌年の開催となりました。南米ではワールドカップ予選が3年間にわたって開催されます。2010年大会予選は、ことしの9月に開幕し、2009年の10月まで行われます。その予選が始まる前にコパ・アメリカを開催することにしたのです。

 アジアカップは従来4年にいちど、ワールドカップの中間年に開催されてきました。前回は2004年でした。しかし「ワールドカップの中間年」はオリンピック年であり、同時にヨーロッパ選手権の年でもあるため、主として大会のマーケティングを考慮して、今回から1年前倒し、すなわちワールドカップの翌年に開催することにしたのです。

 その他の3つの地域選手権を見ると、アフリカのネーションズカップは2年にいちど、偶数年の1月から2月にかけての開催、オセアニアのネーションズカップは4年にいちど、ワールドカップの中間年の開催、そしてヨーロッパ選手権(EURO)も、やはり4年にいちど、ワールドカップの中間年の開催となっています。

 ヨーロッパは、ワールドカップが終わると、その秋から翌年秋にかけてEUROの予選を行い、それが終わると、その秋から翌年の秋にかけてワールドカップ予選を行うという形が定着しています。ワールドカップもEUROも、シーズン(前年8月〜5月)終了後の6月を中心にした大会です。すなわち、ヨーロッパの強豪国の選手たちは、2年にいちど、シーズン終了後にこうした大会を戦うことになります。

■ほとんど休養期間のない代表選手

 ところがワールドカップの翌年に大会が行われると、たとえばブラジル代表選手は、ヨーロッパのシーズンオフにあたる6月に、昨年はワールドカップ、ことしはコパ・アメリカを戦わなければならないことになります。それが終わるとすぐに所属クラブの活動にはいるので、ほとんど3シーズン、休みなしという状態になってしまうのです。冒頭のロナウジーニョの「嘆願書」は、そうした事実がベースになっているのです。

 現代のトップクラスの選手たちは、非常にタイトな日程のなかでプレーしています。国内リーグは基本的に週1試合で、シーズン中の代表チームのスケジュールは、数年前から整備された「FIFAインターナショナル・マッチカレンダー」により、半数は国内リーグとバッティングしない週の週末に設定されていますが、残りの半数は国内リーグの合間の水曜日を中心に行われます。

さらに、代表チームの試合がはいっていない水曜日には、地域選手権内のクラブカップ(UEFAチャンピオンズリーグなど)がはいります。ほぼ10カ月間のシーズンを通じて、選手たちは60から70試合をこなします。すなわち、月に6試合から7試合ということになります。シーズン前の1カ月間はトレーニングに費やされます。だからシーズン後にワールドカップや地域選手権がはいると、選手たちは休養する期間がなくなってしまうのです。

 サッカーから離れ、心身ともにリラックスして過ごす時間の重要性は言うまでもありません。(続く)


大住良之(おおすみ よしゆき)
1951年神奈川県横須賀市生まれ。中学生のとき66年ワールドカップ・イングランド大会の放送を見てサッカーにのめり込む。74年一橋大学卒業後、ベースボール・マガジン社入社、「サッカー・マガジン」編集部勤務。78年より編集長。82年同社退職後、(株)アンサー所属。88年よりフリーランスのサッカージャーナリストとして活動。
74年西ドイツ大会以降7回のワールドカップ取材をはじめ、多くの国際大会、世界各国のサッカー事情を取材。新聞・雑誌を中心に執筆活動を続けている。
アジアサッカー連盟「1998年フットボール・ライター・オブ・ザ・イヤー」受賞。
「日本サッカーライターズ協議会」事務局長。
女子サッカーのクラブチーム「FC PAF」監督。
<主な著書>
「理想のフットボール 敗北する現実」(双葉社 2004)
「代表戦記」(日本経済新聞社 2004)
「がんばれ! 女子サッカー」(共著 岩波書店 2004)
「アジア最終予選」(双葉社 2005)


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